2013年4月30日火曜日

サルコペニアによる嚥下障害のキーワードまとめ



嚥下筋群のサルコペニア発見のポイント
・頭部挙上が自分でできない → 舌骨上筋群の筋力低下の可能性
・舌圧が弱い → 舌筋群の筋力低下の可能性
・舌の厚さが薄い → 舌筋の筋肉量低下の可能性

嚥下障害の高齢者における虚弱・栄養・サルコペニア : リハビリテーション栄養・サルコペニア(筋減弱症)より

口腔、咽頭機能の加齢変化所見
・咀嚼力:咀嚼筋力低下、嚥下までのストローク数が増加・嚥下までの咀嚼時間延長
・口唇閉鎖機能低下
・舌圧低下
・嚥下時の舌骨運動時間が延長
・喉頭の下垂
・咽頭クリアランスの低下
・喉頭挙上遅延時間が長い

サルコペニアの嚥下障害に有益な資料  : リハビリテーション栄養・サルコペニア(筋減弱症)より

口唇・舌機能、舌骨上筋群のトレーニング方法
・呼気抵抗負荷トレーニング
呼気抵抗負荷トレーニングによる舌骨上筋群の筋力強化に関する検討 : 摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌;2011, Vol.15, 174-182

・頭部挙上訓練(head rising exercise / shaker exercise)

・開口訓練
開口運動と舌骨上筋群 その2 (4) : 言語聴覚士勉強中 より

・口唇、舌運動訓練(頬部膨らまし、舌前方保持などのレジスタンストレーニング)
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サルコペニアによる嚥下障害の場合、それに特徴的な所見がいくつか見られることがあるようです。これらが見られる場合は、単に運動のみのトレーニングだけでなく、栄養管理を行なう必要があることになります。
高齢者の栄養評価には、以前の記事の通り、MNAが有効であり、おのずとリハビリテーションを行なう前には栄養評価を導入する必要があることがわかります。

運動訓練は、以前の記事の通り、レジスタンストレーニングが有効であるため、口腔、嚥下器官の運動機能訓練にはレジスタンストレーニングを行なうことが有効になります。

STは、口腔、嚥下器官の各運動に抵抗を加えるためにはどうしたら良いのか、また既存のトレーニング方法にはどのようなものがあるのかを知る必要があります。
さらに、口腔、嚥下器官の評価だけではなく、身体機能の評価も合わせて参照し、サルコペニアの有無を探る必要がありそうです。

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サルコペニア改善のための方略の勉強

2013年4月25日木曜日

サルコペニア改善のための方略の勉強


サルコペニアの改善には、栄養補充と運動を組み合わせて行なう
栄養補充はロイシン高配合のアミノ酸を補充、運動はレジスタンス運動を行なう

・レジスタンス運動によって筋肉量や筋力の増大効果は確認されている

・炭水化物を中心とする栄養補充によって、筋肉量や体力向上は期待できない

・ロイシン高配合のアミノ酸補充は高齢者の筋肉量の増大に有効である

・アミノ酸補充だけではサルコペニア高齢者の体力改善に不十分である

サルコペニア予防のための包括的介入 :日老医誌 2012;49:206-209


・高齢者の筋力増加に効果的な介入
強度:最大挙上重量(IRM)の50%以上(中強度から高強度)
セット数・挙上回数:1~3セット・8~12回/セット
頻度:週2~3回
期間:3ヶ月以上

サルコペニアに対する治療の可能性:運動介入効果に関するシステマティックレビュー:日老医誌 2011;48:51-54

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サルコペニアを改善させるためには、栄養と運動の同時介入が必要になり、栄養補充だけでは、改善が困難だということです。
また、運動機能訓練にはレジスタンス運動が効果的になります。

次回以降、嚥下筋群のサルコペニアの評価やその訓練を調べてみたいと思います。

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サルコペニアの評価についての勉強

2013年4月24日水曜日

サルコペニアの評価についての勉強



サルコペニアの評価には、MNA®(Mini-Nutritional-Assessment:簡易栄養状態評価表)を用いることができる

高齢者や疾患を持った高齢者の運動機能訓練を実施する前には、栄養評価を行ない、低栄養や低栄養リスクを評価する必要がある

http://www.mna-elderly.com/forms/mini/mna_mini_japanese.pdf

・MNA®(Mini-Nutritional-Assessment:簡易栄養状態評価表)点数は、SMI(Skeletal Muscle Mass Index:骨格筋指数)の点数と有意な相関が認められ、低栄養リスクまたは低栄養状態がサルコペニアおよびPreサルコペニアの関連因子と判明

・サルコペニアの有無と短縮版MNAに有意な関連性がある
・虚弱症候群と包括的栄養指標の関連性の検討でサルコペニア+サルコペニア予備軍は、MNA-SFで「栄養不良」+「リスクあり」と強い関連を認めた
・虚弱サイクルの病態では、低栄養がサルコペニアと関連し、中核をなしている

・MNA®-SFの設問から考察すると、脳卒中、大腿骨頸部骨折、廃用症候群、誤嚥性肺炎などの患者の場合、低栄養のおそれあり(At risk)もしくは低栄養という結果になる

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高齢者や疾患を持った高齢者の方に身体機能や口腔機能、嚥下機能の運動機能訓練を行なう場合、すでに低栄養または低栄養のリスクがある状態が予測されるため、MNAを用いた評価を行ない、栄養状態の評価をすることが必要となります。
そこで低栄養または低栄養のリスクがあると判断された場合は、栄養管理は必須になります。
さらに栄養管理と運動療法を行なうことにより、サルコペニアを改善させることができます。
栄養+運動療法により得られたサルコペニアの改善は、摂食嚥下機能を含む心身機能を改善させ、ADLなどの活動を十分に引き出す土台になります。

参考文献

老年医学におけるサルコペニアの重要性とその栄養との関連:Nestle Nutrition Council, Japan;September,2012

高齢者の慢性疾患に伴う低栄養・サルコペニアの評価に関する研究(22-1):長寿医療研究開発費平成23年度総括研究報告

MNA®-SFとリハ栄養
リハビリテーション栄養・サルコペニア(筋減弱症)のBlogより)


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2013年4月23日火曜日

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サルコペニアと嚥下・栄養についての基礎的な勉強

サルコペニア:
加齢とともに生じる体たんぱく質の合成能低下と食欲の低下などを原因とするたんぱく質・エネルギーの摂取不足によって生じる骨格筋の減少,筋力の低下のこと

・身体だけでなく、口腔の筋肉も歳を取るとサルコペニアになる。
・口唇の力はあまり変わらないが、舌の力は低下するという報告がある。
・要介護状態や嚥下障害がある状態では、より舌の力が落ちやすい
・栄養介入と口腔機能訓練を合わせて行なうと、栄養介入だけよりも栄養状態が改善する。
・「ぱ」「た」「か」(オーラルディアドコキネシス)を行なうと、健常高齢者、要介護高齢者ともに「た」「か」の舌口蓋音が「ぱ」の口唇破裂音よりも運動機能が低下していた。特に要介護高齢者は顕著。加齢により舌の力が低下するだけでなく、巧緻性も低下する。

・サルコペニアになる原因は加齢だけではない。
・脳血管障害やその他の疾患など様々なことが原因で筋萎縮が起こる。
・疾患により使わなくなってしまったため(廃用)でも起こる。

・「サルコペニアが生じる→嚥下筋群の運動機能が低下→嚥下障害で栄養が十分に摂れない→サルコペニアが進行→さらに嚥下筋群の運動機能が低下→さらに嚥下障害が悪化→・・・・・」というように悪循環になる。
・悪循環を断ち切るために、栄養を改善しながら筋力運動機能訓練を行なうことが必要。

------------------------------------

高齢になるとそれ自体が原因でサルコペニアが生じ、口腔機能や嚥下機能に影響します。
その影響は、さらに準備期、口腔期、咽頭期の運動を低下させて、顕性・不顕性誤嚥を引き起こし、誤嚥性肺炎につながっていきます。
要介護状態では、その低下は顕著になり、誤嚥性肺炎を生じやすい状態です。
サルコペニアにより嚥下障害が引き起こされると、十分な栄養が摂れなくなり、さらにサルコペニアが進行するという悪循環に陥ります。

間接的嚥下訓練や直接的嚥下訓練を行なう場合においても、「筋力をつける」「動きを良くする」といった「運動」というアウトプットに注目していると、そもそもインプットである「栄養」が不足していることを見落とすことがあります。
栄養不良によりサルコペニアになり、運動機能が落ちてきていることに気づけば、きちんと栄養管理をしながら運動を行なう必要性がわかります。

摂食嚥下訓練における胃ろうの話もここにつながってきます。
嚥下が改善する可能性がある場合、「今は」胃ろうから栄養管理をしながら嚥下訓練を行ない、嚥下の改善が見られ始めたら、徐々に胃ろうから経口摂取に移行していくことが望ましいでしょう。
これは「胃ろう造設は嚥下訓練の一環」ということになります。

このような摂食嚥下訓練を実施していく場合、「栄養評価」「サルコペニアが生じているかどうかの評価」を行なう必要があり(入力系)、さらに「サルコペニアに対する運動機能訓練」の一般的な方法論(出力系)を知っておく必要もあります。

文献
・口腔機能へのアプローチ‐リハビリテーション栄養の視点から‐:リハビリテーション栄養・サルコペニア(筋減弱症)のBlogより

・3.口腔の老衰とその対策:日老医誌 2010;47:113―116



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2013年4月22日月曜日

特定高齢者や要支援高齢者に対する日常的な口腔機能訓練の効果




特定高齢者、要支援高齢者で口腔機能低下がある方に対し、一般的な口腔体操と口腔ケアを行なうと構音機能や嚥下機能が有意に改善する

日常的に行う口腔機能訓練による高齢者の口腔機能向上への効果:口腔衛生会誌J Dent Hlth 58: 88―94, 2008

・対象は、特定高齢者、要支援高齢者
・一般的に行なわれている口腔体操の指導を1日3回、3ヶ月間実施
・ 口唇閉鎖力、音節交互反復運動回数(/pa/ /ta/ ka/)が有意に向上、RSST3回未満は3回以上に有意に改善、初回嚥下までの時間が有意に短縮
・RSST3回以上には大きな変化がなかった
・フードテストは有意差は見られないが、低下はなし

--------------------------------------------
特定高齢者や要支援高齢者の中には、口腔体操を積極的に行なうことで、加齢に伴う口腔機能低下を改善させることができます。
嚥下に直接関係するRSSTの値が3回未満の場合は、積極的に訓練を行なうことで嚥下機能を改善させることができます。
RSST3回以上の方には変化はないが、低下も見られず、フードテストでは全例で低下例はないため、口腔機能訓練で維持が可能だったことも考えられます。

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反復唾液嚥下テスト(RSST)

「方法」
検者は被検者の喉頭隆起・舌骨に指腹をあて,30秒間嚥下運動を繰り返させる。
被検者には「できるだけ何回も”ごっくん”と飲み込むことを繰り返して下さい」と説明する。
喉頭隆起・舌骨は、嚥下運動に伴って、指腹をのり越え前方に移動し、また元の位置に戻る。
この下降運動を確認し、嚥下完了時点とする。
嚥下運動時に起こる喉頭挙上→下降運動を触診で確認し、30秒間に起こる嚥下回数を数える。
高齢者では、30秒間に3回できれば正常とする。

「反復唾液嚥下テスト( repetitive saliva swallowing test , RSST )の注意点」
嚥下障害患者では,1回目の嚥下運動はスムーズに起きても、
2回目以降、喉頭挙上が完了せず、喉頭隆起・舌骨が上前方に十分移動しないまま、
途中で下降してしまう場合がある。
これを真の嚥下運動と鑑別することに注意を要する。
口渇が強く、嚥下運動を阻害していると考えられる患者には、
人工唾液(サリベート)や少量の水を口腔内に噴霧し、同時にテストを施行する。
また、30秒では嚥下運動が観察されない場合には、観察時間を1分に延長する。
観察時間の延長は、重度嚥下障害の経時的変化を追跡する場合に有用である。  
st-medica:反復唾液嚥下テスト より)

30秒間で3回未満では、誤嚥している可能性が高い
・VFとの妥当性の相関関係は、誤嚥(誤嚥量、誤嚥頻度)で0.981、不顕性誤嚥で0.976と高い相関関係を示していて、誤嚥の有無を判別できる

機能的摂食・嚥下障害スクリーニングテスト「反復唾液嚥下テスト」の開発と応用:藤田学園学会誌2004   

反復唾液嚥下テスト RSSTは嚥下の簡易評価として多くの現場で用いられています。
介護予防分野では、口腔機能向上支援のアセスメントとしても使われます。
RSSTが3回未満であると誤嚥している可能性があり、
誤嚥性肺炎の発症につながっていくことを示唆しています。

口腔機能訓練などのアプローチを行なう前と後をRSSTで評価することにより、
RSSTが30秒間に3回未満だった方が3回以上に改善すれば、
誤嚥している可能性は低くなり、誤嚥性肺炎のリスクは減少、
誤嚥性肺炎を予防できることにつながります。

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2013年4月16日火曜日

アルツハイマー型認知症に対するアロマセラピーの効果



・軽度から中等度のアルツハイマー型認知症の知的機能(特に自己に対する見当識)の改善に効果があった。
アルツハイマー病患者に対するアロマセラピーの有用性:2005, 日本痴呆学会(現:日本認知症学会)

・夜間睡眠時間の延長、中途覚醒、早朝覚醒の減少が見られた。
認知症高齢者に対するアロマセラピーの睡眠効果に関する2症例の検討:2009, 厚生連医誌

アロマが不安の軽減に効果的なことは、
うつ病の回復に効果がありそうだという報告からもわかったが、
認知症の方では、睡眠状態が改善したという報告があった。

睡眠が良好になれば、夜間の徘徊や日中の覚醒レベルの安定につながり、
日中の活動ができるようになったり、精神的な不安感の軽減にもなる。
日中の活動がスムーズにできるようになれば、
デイに出かけ、入浴などができたり、
他者とコミュニケーションをとることができる。
これらは、認知症の進行を遅らせることにつながるかもしれない。

アルツハイマー型認知症の軽度中等度の知的機能が改善するという報告は、
認知症の中核症状が改善することから、
その方の生活が直接的に大きく改善する可能性もある。

どちらの報告も「生活がどうなったのか?」という部分がわからないため、

認知症の問題行動と言われる拒否、徘徊、異食、暴力などが減り、
認知症を抱える方が穏やかな過ごせるようになったかどうかはわからない。

しかし、一方で、こういう報告を読んでいると
「アロマは "良さげ"だからやってみよう」というぼやけたものではなく、
「この方のこの部分の問題解決のためにアロマをやってみよう」
という話につながってくる。
同時にアロマを扱う人たちの専門性(アロマの知識や技術)が必要で、
それはリハビリの専門職が問題把握、目標、計画という流れを
専門的に組み立ててリハビリを行なうことと同じだろうと思う。

2013年4月15日月曜日

アロマセラピーが抑うつ感や不眠に効果があるという報告


アロマが抑うつ感や不眠に効果があるという話

うつ病治療で使われる精神科の薬は、
回復段階で減らしていくときなかなか減らせなかったり、
治療段階では服薬中に副作用で苦労したります。
老年期の方になると、日中の覚醒レベルにも影響が出やすく、
日常生活が通常通りに過ごせない場合もしばしばあります。
しかし、精神科の薬を服用しないと、不安などが強くなり、
これもまた日常生活が穏やかに過ごせないこともあります。

僕自身のうつ病の経験から、
案外、薬を減らしていくのは勇気がいることだったので、
「薬を飲まなくても、不安や抑うつ感は減らせないのか?」
という疑問からアロマを調べてみました。

・うつ病また不安障害と診断された患者に対して抑うつ感が有意に改善
・ラベンダー精油によって不眠障害や抑うつ感が改善
・ラベンダー、ジャスミン、ゼラニウムで更年期の不快な症状が改
・うつ病の治療薬の減薬効果があったという報告
・うつ病の再燃予防役立つという意見

・精油による匂い刺激が脳の神経伝達物質に影響を与えている

・依然、データ数が蓄積されていないため、エビデンスがあるとは言えないが、
抗うつ作用などうつ病など抑うつ感を伴う疾患に対して効果がある可能性がある

継続的にアロマを用いれば、抑うつ感や不安は軽減できるのかもしれません。
また、注目したかったのは、「再燃予防」の効果があるかもという意見でした。


アロマセラピーは、うつ病の回復過程の減薬や抑うつ感、不眠の解消、
さらに寛解後の再発予防として補助的に使える方法だと思います。

また高齢者医療介護の中では、安易な精神科薬剤の投薬に頼り過ぎず、
安定した生活を保つために補完代替医療の1つとして、
積極的に用いられても良いのではないかと思いました。



文献
アロマセラピーによるうつ病治療とそのメカニズム
aromatpia : No102.2011,p.11-p13

2013年4月14日日曜日

転院先は嚥下再評価を徹底すべし / 胃ろうと嚥下



記事は、胃ろうに対するフランスの医師の見解です。
栄養状態をよくしておくことで術後の回復を早めたり、
回復の見込みがある栄養失調状態に胃ろう造設を行なうという。
普通に考えれば、普通の話で、治療の一環という考え方です。

日本では、「口から食べられなくなった」から「胃に穴をあけて栄養しましょう」という構図が今まで多かったのだと思います。

急性期や回復期では、意識障害があまり改善しなかったり、
短期間の臥床から廃用症候群が進行し始めてしまい、
嚥下障害が思うように改善しないこともあります。

その場合、退院までに口から食べることが十分にできず、
胃に直接栄養剤を入れて栄養する胃ろうという状態のままになりがちです。

重要なことは、
「一度嚥下訓練をやったし、一度胃ろうにしてしまったから、もう口からは食べられない」
と考えてしまうのではなく、
「次の転院先で嚥下状態をもう一度アセスメントすること」
です。

状態は変わっているかもしれないし、
急性期、回復期ではできなかった訓練ができるような環境かもしれない。


もし口からもう一度食べられる可能性があるならば、
胃ろうはそのまま継続して嚥下訓練を行なえば良い話です。
この場合、胃ろうは治療の一環になるのだと思います。


もし口からもう一度食べることはできないのであれば、
胃ろうを継続するか否かを考える時期になります。

嚥下訓練に関係する医療者は、
「今は胃ろうだけれど、次の病院でもう一度アセスメントをする必要性がある」
ということを念頭に置いておく必要があるのだと思います。


フランス終末期医療(1)胃ろうは治療の一環

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=75774&from=tw

 

合わせて読みたい記事

慢性期の嚥下リハに関する研究

http://stpiroriha.blogspot.jp/2013/04/blog-post_9.html

2013年4月13日土曜日

維持しているということが重要


介護予防分野でSTの役割は、本当はどこにあるのか?を模索しながら、
口腔機能向上についていろいろと検索していました。

嚥下関連から見た在宅の高齢者の方々(要介護も含め)の最大の目標は、
「誤嚥性肺炎にならないこと」だと思います。

そのためには、口腔ケアは必須です。
研究報告では、専門的口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防になるといった報告があります。
専門的口腔ケアは歯科衛生士さんが行なうものです。

では、「口腔機能向上のために口腔の運動機能訓練を行うこと」がSTの役割だとすると、
「口腔機能向上が誤嚥性肺炎予防になるのか?」といった疑問が浮かびます。

多くの介護予防事業所の研究では、口腔の運動機能訓練により「RSSTやオーラルディアドコキネシスが改善した」という報告が上がっています。
RSSTが改善したことは、誤嚥の可能性が低くなったということになります。

そのことから推測すると、誤嚥性肺炎の予防に効果があったということになります。


実際にその後誤嚥性肺炎になっていないかどうか?は追跡研究がないためわかりません。


「食事が食べやすくなった!」「飲み込みやすくなった!」という部分に

焦点を当ててみると、多少そのような声があったという報告もありました。
ただ、主観的なものですので、客観的にどう変わったかという指標にはならないため、

個人差があることも考えなくてはいけません。

「発熱していない」「むせが少なくなった」「肺炎になっていない」など、
以前と生活が大きく変わっていないということは、予防効果があったとも言えるでしょう。

2013年4月11日木曜日

嚥下体操は本当に効果があるのか?



「自立高齢者は口腔体操や唾液腺マッサージで嚥下機能の改善の余地があるという見解。」

「嚥下体操が加齢に伴う嚥下機能低下に改善がみられたという見解

嚥下体操は本当に効果があるのか?と思って調べていたら、研究数がそれほど多くありません。
しかし、介護予防教室のような形で口腔機能向上の研究発表では、
口腔体操を実施して良くなったという報告も多くありました。

どれもN数が少ないので、「すごく良くなった!」という感じではなさそうですが、
この報告からは、健康そうな高齢者(特定高齢者)には嚥下機能の改善の余地があるということがわかりました。

体操の意味を理解して行ったり、口腔ケアの仕方などを理解して継続できることに必要なことは、「認知機能が保たれている」ことです。

健康そうな高齢者(特定高齢者)の介護予防には効果的だけれど、
要介護状態や認知症の方には何が効果的なのかまた課題が見えてきました。



文献
介護予防教室での口腔機能向上サービスへの取り組みとその効果:日本歯科衛生学会雑誌6(1): 147-147,2011.

II-P2-21 高齢者に対する嚥下体操の効果 :日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 7(2): 242-242, 2003.

2013年4月10日水曜日

口腔ケア・口腔機能訓練の効果について



口腔ケアや口腔機能訓練が口腔内乾燥などの口腔機能や嚥下機能に効果があるという話。

「要支援、要介護1には口腔ケア、それ以上は口腔機能訓練でRSSTが有意に改善する」

「要支援に歯ブラシを用いた口腔粘膜マッサージを行うと口腔内乾燥など口腔機能向上に効果がある」

抄録からなので詳しいことはわからないですが、
介護度が軽い方々には口腔ケア系が、 
介護度が重い方には口腔機能訓練が有意に効果が見られているようです。

要支援、要介護1くらいの方々で総義歯の方はよくいらっしゃいますが、
口腔粘膜マッサージをやる必要があることになります。

あれだけ毎日会話や、食事をしている口腔、咽頭にも
上肢や下肢の運動機能と同じように加齢に伴う筋力低下や更なる廃用性低下により

摂食嚥下障害が生じうるということや誤嚥性肺炎になりうるということです。

文献
II-5-9 口腔粘膜マッサージの口腔機能向上効果について: Vol.13,445-446,2009 学会抄録 第15回日本摂食・嚥下リハビリテーション学会学術大会 一般抄録演題集 : 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌


I-5-6 通所介護施設利用者に対する口腔機能向上プログラムの効果 : Vol.9, 317-317, 2005 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌

2013年4月9日火曜日

慢性期の嚥下リハに関する研究


今から5年ほど前にリハビリナースという雑誌に投稿した慢性期病院の嚥下リハの研究。

何らかの要因により長期臥床状態で廃用症候群が著明になっている方々が多く転院され、
STが評価や訓練で介入して、DHやNs、ヘルパーと協力して嚥下リハを行うと、
80%近くの方が何かしら食べられるようになりました。


この研究の前に勤めていた病院でも同じような研究を行いましたが、
やはり同じような結果が出ています。


急性期では、肺炎をおこなさいように口腔ケアや離床を進めて、
それでも入院中に摂食は難しく、継続したリハを行えば摂食できる可能性があるという場合、

胃瘻のような処置を行って、慢性期病院へ転院してから再度ST評価を行い、
訓練を進めることにより、食べられるようになる方が結構沢山います。

患者さんも家族も食べられないことはしんどいし、苦しい。
言語聴覚士やスタッフもしんどくなるし、自信がなくなる。
でもやれば食べられるようになる方がいるということをわかってもらって、
慢性期での嚥下リハの励みにしてもらいたいです。

リハビリナースはもう在庫がないので、文献検索で検索して、DLするしかなさそうです。


「 介護療養型医療施設における摂食・嚥下リハビリテーションチーム活動の効果と課題」
リハビリナース 2008年 1巻4号 p.104 –108
メディカ出版

リハビリナース
http://www.medica.co.jp/catalog/m/3399

どっかの文献検索サイト
http://www.pieronline.jp/content/article/1882-3335/1040/104


メディカルオンライン
http://www.medicalonline.jp/

2013年4月8日月曜日

考え方


何がしたいのか?→どうしたらできるのか?という流れ。
何がしたいのか?→なぜできないのか?という流れ。
両方ともに必要な考え方だけれど、より重要なのは、前者の流れ。

リハビリテーションの考え方はどちらの考え方も持っていて、
後者の考え方で原因が掴めても、それを取り除けない場合がある。
だからこそ、前者のように「どうしたらできるのか?」という転換が大切。

この考え方、意外と業務改善につながっていると思う。