2013年9月20日金曜日

のどのアイスマッサージは本当に効果があるのか?


のどのアイスマッサージは本当に効果があるのか

・脳血管障害により嚥下障害を持つ患者においてアイスマッサージが即時効果を持つ

・アイスマッサージは嚥下反射の惹起の潜時を有意に短縮し, 嚥下反射が起きない患者でさえ嚥下を起こし得ることを示した

・アイスマッサージは, さまざまな疾患により嚥下障害を持つ患者に広く適応があること, また, 脳血管障害の有無にかかわらず障害された核上性の経路と正常な核や核下性の経路のいずれかまたはいずれも促通し得ることが示された.

・のどのアイスマッサージが嚥下反射を惹起する時間を短縮し, 非施行時に嚥下反射が惹起しない時はこれを惹起させうることを示した

中村智之, 藤島一郎:
脳血管障害以外の原因で嚥下障害を持つ患者へののどのアイスマッサージによる嚥下反射惹起への有効性 : 嚥下医学:2012;Vol.1,No.2,413 - 420

寺岡史人他:
アイスマッサージによる嚥下反射惹起の促通効果 : The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine:Vol.45,No.5,308 - 308,2008 / 5

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摂食嚥下訓練の基礎訓練として使われる「のどのアイスマッサージ」ですが、様々な疾患の嚥下障害に対して、嚥下反射を惹起させることができるようです。その効果は即時性が高く、惹起までの時間が早くなる(短くなる)ということでした。

持続的な効果はどうかわかりませんが、のどのアイスマッサージを使って、嚥下反射を十分に惹起できるように促進させ、段階的摂食訓練を行なっていくことは意味のあることだと思われます。

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2013年5月7日火曜日

認知行動療法の勉強 認知と抑うつ気分


うつ状態の時に起こる認知の仕方(物事の考え方・捉え方)
1.自分のことをマイナスに考えすぎる
2.周りの人や物事をマイナスに考えすぎる
3.将来のことを悲観的に考えすぎる

これらが抑うつ気分になっているときに頭に自然に浮かんでくる考えやイメージ=「自動思考」

自動思考の根底には幼少期の体験に形成された強いマイナス観念がある=「スキーマ」

例)
状況:仕事でミスをした
スキーマ:私には能力がない
認知(自動思考):「またミスをした」「みんな私のことを駄目なやつだと笑っているだろう」
気分(感情):不安、緊張、抑うつ気分
身体症状:身体的緊張、動悸、胃痛、頭痛
行動:オロオロする、トイレに逃げ込む

「状況」によって、「スキーマ」から「認知(自動思考)」が引き起こされ、連鎖的に「気分」「身体症状」「行動」と影響し、「私はなんて駄目な人間だ」とさらに自動思考が生じ、悪循環を起こす


「状況」→「認知」→「気分」「身体症状」「行動」→「認知」→・・・・・

うつ病になぜ認知行動療法が効果的なのか:メンタルヘルスとリワーク  より
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抑うつ気分のときの認知の仕方(自動思考)が、気分や身体症状、行動に影響し、さらに抑うつ気分を増幅させている。

認知行動療法の特徴の1つは、この認知の仕方に注目し、マイナスに考えすぎていないかどうかを客観視することで、自分の間違った認知の仕方を修正することを繰り返していく。
ただし、急激に抑うつ気分が改善するわけではなく、10だったものが、修正をしていくにつれ、9、8、7・・・と減少したり、修正が早くできるようになったりする。

自分の認知の仕方(自動思考)を把握し修正できれば、大きな抑うつ気分にならずに済み、治療薬の減薬などのうつ病治療になる。
また、抑うつ気分になりやすい自分の思考を知ることによって、将来のうつ病再発予防にもなる。

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2013年4月30日火曜日

サルコペニアによる嚥下障害のキーワードまとめ



嚥下筋群のサルコペニア発見のポイント
・頭部挙上が自分でできない → 舌骨上筋群の筋力低下の可能性
・舌圧が弱い → 舌筋群の筋力低下の可能性
・舌の厚さが薄い → 舌筋の筋肉量低下の可能性

嚥下障害の高齢者における虚弱・栄養・サルコペニア : リハビリテーション栄養・サルコペニア(筋減弱症)より

口腔、咽頭機能の加齢変化所見
・咀嚼力:咀嚼筋力低下、嚥下までのストローク数が増加・嚥下までの咀嚼時間延長
・口唇閉鎖機能低下
・舌圧低下
・嚥下時の舌骨運動時間が延長
・喉頭の下垂
・咽頭クリアランスの低下
・喉頭挙上遅延時間が長い

サルコペニアの嚥下障害に有益な資料  : リハビリテーション栄養・サルコペニア(筋減弱症)より

口唇・舌機能、舌骨上筋群のトレーニング方法
・呼気抵抗負荷トレーニング
呼気抵抗負荷トレーニングによる舌骨上筋群の筋力強化に関する検討 : 摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌;2011, Vol.15, 174-182

・頭部挙上訓練(head rising exercise / shaker exercise)

・開口訓練
開口運動と舌骨上筋群 その2 (4) : 言語聴覚士勉強中 より

・口唇、舌運動訓練(頬部膨らまし、舌前方保持などのレジスタンストレーニング)
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サルコペニアによる嚥下障害の場合、それに特徴的な所見がいくつか見られることがあるようです。これらが見られる場合は、単に運動のみのトレーニングだけでなく、栄養管理を行なう必要があることになります。
高齢者の栄養評価には、以前の記事の通り、MNAが有効であり、おのずとリハビリテーションを行なう前には栄養評価を導入する必要があることがわかります。

運動訓練は、以前の記事の通り、レジスタンストレーニングが有効であるため、口腔、嚥下器官の運動機能訓練にはレジスタンストレーニングを行なうことが有効になります。

STは、口腔、嚥下器官の各運動に抵抗を加えるためにはどうしたら良いのか、また既存のトレーニング方法にはどのようなものがあるのかを知る必要があります。
さらに、口腔、嚥下器官の評価だけではなく、身体機能の評価も合わせて参照し、サルコペニアの有無を探る必要がありそうです。

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2013年4月25日木曜日

サルコペニア改善のための方略の勉強


サルコペニアの改善には、栄養補充と運動を組み合わせて行なう
栄養補充はロイシン高配合のアミノ酸を補充、運動はレジスタンス運動を行なう

・レジスタンス運動によって筋肉量や筋力の増大効果は確認されている

・炭水化物を中心とする栄養補充によって、筋肉量や体力向上は期待できない

・ロイシン高配合のアミノ酸補充は高齢者の筋肉量の増大に有効である

・アミノ酸補充だけではサルコペニア高齢者の体力改善に不十分である

サルコペニア予防のための包括的介入 :日老医誌 2012;49:206-209


・高齢者の筋力増加に効果的な介入
強度:最大挙上重量(IRM)の50%以上(中強度から高強度)
セット数・挙上回数:1~3セット・8~12回/セット
頻度:週2~3回
期間:3ヶ月以上

サルコペニアに対する治療の可能性:運動介入効果に関するシステマティックレビュー:日老医誌 2011;48:51-54

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サルコペニアを改善させるためには、栄養と運動の同時介入が必要になり、栄養補充だけでは、改善が困難だということです。
また、運動機能訓練にはレジスタンス運動が効果的になります。

次回以降、嚥下筋群のサルコペニアの評価やその訓練を調べてみたいと思います。

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2013年4月24日水曜日

サルコペニアの評価についての勉強



サルコペニアの評価には、MNA®(Mini-Nutritional-Assessment:簡易栄養状態評価表)を用いることができる

高齢者や疾患を持った高齢者の運動機能訓練を実施する前には、栄養評価を行ない、低栄養や低栄養リスクを評価する必要がある

http://www.mna-elderly.com/forms/mini/mna_mini_japanese.pdf

・MNA®(Mini-Nutritional-Assessment:簡易栄養状態評価表)点数は、SMI(Skeletal Muscle Mass Index:骨格筋指数)の点数と有意な相関が認められ、低栄養リスクまたは低栄養状態がサルコペニアおよびPreサルコペニアの関連因子と判明

・サルコペニアの有無と短縮版MNAに有意な関連性がある
・虚弱症候群と包括的栄養指標の関連性の検討でサルコペニア+サルコペニア予備軍は、MNA-SFで「栄養不良」+「リスクあり」と強い関連を認めた
・虚弱サイクルの病態では、低栄養がサルコペニアと関連し、中核をなしている

・MNA®-SFの設問から考察すると、脳卒中、大腿骨頸部骨折、廃用症候群、誤嚥性肺炎などの患者の場合、低栄養のおそれあり(At risk)もしくは低栄養という結果になる

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高齢者や疾患を持った高齢者の方に身体機能や口腔機能、嚥下機能の運動機能訓練を行なう場合、すでに低栄養または低栄養のリスクがある状態が予測されるため、MNAを用いた評価を行ない、栄養状態の評価をすることが必要となります。
そこで低栄養または低栄養のリスクがあると判断された場合は、栄養管理は必須になります。
さらに栄養管理と運動療法を行なうことにより、サルコペニアを改善させることができます。
栄養+運動療法により得られたサルコペニアの改善は、摂食嚥下機能を含む心身機能を改善させ、ADLなどの活動を十分に引き出す土台になります。

参考文献

老年医学におけるサルコペニアの重要性とその栄養との関連:Nestle Nutrition Council, Japan;September,2012

高齢者の慢性疾患に伴う低栄養・サルコペニアの評価に関する研究(22-1):長寿医療研究開発費平成23年度総括研究報告

MNA®-SFとリハ栄養
リハビリテーション栄養・サルコペニア(筋減弱症)のBlogより)


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2013年4月23日火曜日

サルコペニアと嚥下・栄養についての基礎的な勉強


サルコペニアと嚥下・栄養についての基礎的な勉強

サルコペニア:
加齢とともに生じる体たんぱく質の合成能低下と食欲の低下などを原因とするたんぱく質・エネルギーの摂取不足によって生じる骨格筋の減少,筋力の低下のこと

・身体だけでなく、口腔の筋肉も歳を取るとサルコペニアになる。
・口唇の力はあまり変わらないが、舌の力は低下するという報告がある。
・要介護状態や嚥下障害がある状態では、より舌の力が落ちやすい
・栄養介入と口腔機能訓練を合わせて行なうと、栄養介入だけよりも栄養状態が改善する。
・「ぱ」「た」「か」(オーラルディアドコキネシス)を行なうと、健常高齢者、要介護高齢者ともに「た」「か」の舌口蓋音が「ぱ」の口唇破裂音よりも運動機能が低下していた。特に要介護高齢者は顕著。加齢により舌の力が低下するだけでなく、巧緻性も低下する。

・サルコペニアになる原因は加齢だけではない。
・脳血管障害やその他の疾患など様々なことが原因で筋萎縮が起こる。
・疾患により使わなくなってしまったため(廃用)でも起こる。

・「サルコペニアが生じる→嚥下筋群の運動機能が低下→嚥下障害で栄養が十分に摂れない→サルコペニアが進行→さらに嚥下筋群の運動機能が低下→さらに嚥下障害が悪化→・・・・・」というように悪循環になる。
・悪循環を断ち切るために、栄養を改善しながら筋力運動機能訓練を行なうことが必要。

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高齢になるとそれ自体が原因でサルコペニアが生じ、口腔機能や嚥下機能に影響します。
その影響は、さらに準備期、口腔期、咽頭期の運動を低下させて、顕性・不顕性誤嚥を引き起こし、誤嚥性肺炎につながっていきます。
要介護状態では、その低下は顕著になり、誤嚥性肺炎を生じやすい状態です。
サルコペニアにより嚥下障害が引き起こされると、十分な栄養が摂れなくなり、さらにサルコペニアが進行するという悪循環に陥ります。

間接的嚥下訓練や直接的嚥下訓練を行なう場合においても、「筋力をつける」「動きを良くする」といった「運動」というアウトプットに注目していると、そもそもインプットである「栄養」が不足していることを見落とすことがあります。
栄養不良によりサルコペニアになり、運動機能が落ちてきていることに気づけば、きちんと栄養管理をしながら運動を行なう必要性がわかります。

摂食嚥下訓練における胃ろうの話もここにつながってきます。
嚥下が改善する可能性がある場合、「今は」胃ろうから栄養管理をしながら嚥下訓練を行ない、嚥下の改善が見られ始めたら、徐々に胃ろうから経口摂取に移行していくことが望ましいでしょう。
これは「胃ろう造設は嚥下訓練の一環」ということになります。

このような摂食嚥下訓練を実施していく場合、「栄養評価」「サルコペニアが生じているかどうかの評価」を行なう必要があり(入力系)、さらに「サルコペニアに対する運動機能訓練」の一般的な方法論(出力系)を知っておく必要もあります。

文献
・口腔機能へのアプローチ‐リハビリテーション栄養の視点から‐:リハビリテーション栄養・サルコペニア(筋減弱症)のBlogより

・3.口腔の老衰とその対策:日老医誌 2010;47:113―116



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2013年4月22日月曜日

特定高齢者や要支援高齢者に対する日常的な口腔機能訓練の効果




特定高齢者、要支援高齢者で口腔機能低下がある方に対し、一般的な口腔体操と口腔ケアを行なうと構音機能や嚥下機能が有意に改善する

日常的に行う口腔機能訓練による高齢者の口腔機能向上への効果:口腔衛生会誌J Dent Hlth 58: 88―94, 2008

・対象は、特定高齢者、要支援高齢者
・一般的に行なわれている口腔体操の指導を1日3回、3ヶ月間実施
・ 口唇閉鎖力、音節交互反復運動回数(/pa/ /ta/ ka/)が有意に向上、RSST3回未満は3回以上に有意に改善、初回嚥下までの時間が有意に短縮
・RSST3回以上には大きな変化がなかった
・フードテストは有意差は見られないが、低下はなし

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特定高齢者や要支援高齢者の中には、口腔体操を積極的に行なうことで、加齢に伴う口腔機能低下を改善させることができます。
嚥下に直接関係するRSSTの値が3回未満の場合は、積極的に訓練を行なうことで嚥下機能を改善させることができます。
RSST3回以上の方には変化はないが、低下も見られず、フードテストでは全例で低下例はないため、口腔機能訓練で維持が可能だったことも考えられます。

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